リラックスと集中

 2005-11-30
 芝居に限らず、スピーチする時、面接の時、人前で何かをやらなければならないときなどに、緊張してしまうことがあると思います。
 ワークショップでも「どうしたらリラックスできますか?」という質問はよく受けます。

 リラックスするためには何かに集中すること、集中するためにはリラックスが必要です。リラックスと集中は切っても切れない関係です。
 自分で意識を一点に集めると、体の余計な力は抜けていきます。それにつれて、落ち着かない気持ちも静められます。
 問題は『何に集中するか』です。

 最も簡単で、どこでも出来るエクササイズを一つ紹介します。

 それは『呼吸』です。
 「なんだ」と思う人もいるかも知れませんが、『呼吸』の力はすごいんですよ。普段は全く自分で意識せずに、「息を吐く、吸う」事をしていますが、自分で意識して行うことで色んなことが変わってきます。

 まずは『腹式呼吸』の簡単な練習から始めましょう。
 最初は床に寝てやったほうがわかりやすいと思います。寝た状態で、足は肩幅くらいに開き、腕は体から少し離して開いた状態にします。手のひらは床につけます。体の裏側(後頭部、首の裏側、背中や腰、脚の裏側)がベターっと床につくイメージでいてください。それから目を閉じたほうが集中しやすいでしょう。
 呼吸は「息を吐くときにお腹がへこむ、吸うときにお腹が膨らむ」ようにします。自分のお腹がポンプだと思ってください。
 まず口から息をゆっくり吐きます。お腹に力を入れて空気を押し出すように。全部の空気を吐ききったら、お腹の力を緩めます。そうすると息を吸おうと思わなくても勝手に空気が入ります(空気を入れるのは鼻から!)。
 
集中するポイントと注意点は、

・お腹で空気を押し出して、出し切ったら力を抜く。
・お腹以外の体の部分に余計な力が入らないようにする。特に肩や胸が動かないように。
・自分の体の動きや感覚を意識して感じる。


そして慣れてきたら、

・きれいな空気が体に入ってきて、体中隅々に行き渡り、空気を出す時には体の中にある「いらないもの」「汚いもの」が一緒に出て行き、一回一回の呼吸で体がきれいになり、リフレッシュされるようイメージする。

という集中に移っていきます。
 この課程で意識は『呼吸』という一点とそれに関わる2、3の事柄に絞られるため、体の力は適度に抜け、気持ちも落ち着き、リラックスします。

 立って、座って、いろいろな姿勢でやってみてください。自分で自由に使えるようになると、体の感覚や、ものの見方も変わってきますよ。
 特に俳優にとっては『呼吸』はあらゆる面でベースとなるものです。「発声」「感情表現」「自己表現」など、全てのものが『呼吸』抜きでは成立しません。
 
 お金もかからず、いつでもどこでも自分で出来る、エクササイズですよ。


S#14 やり場の無い感情

 2005-11-28
「3期生の岡と申しますが、ダンさんがスクールを辞めるというのはどういうことなんですか?」
 俺はストレートに訊いて見てた。T氏は、
「スクールと彼の方針が一致しないんですよ。」
「俺は4月に入ったばっかりで、まだ1ヵ月しか経ってないんですけど、それでダンさんが辞めるのは納得がいかないんですけど。」
「それは仕方ありませんね。」
「“仕方ない”って何ですか?!俺はダンさんがいるから、ダンさんから学びたくて入学したんですよ!」
「そう言われても困るんですよ。彼はスクールの一講師ですから。新しい講師もいますし、レッスン内容も質的には変わりませんよ。」
「冗談じゃないですよ!ダンさんの名前を使って看板にして、人を集めてたじゃないですか!だから生徒だって沢山来たんじゃないんですか。それなのにこういう状況になるって言うのはおかしいですよ!」

 俺とT氏の押し問答はしばらく続いた。
 T氏の言うには、俺はスクールの一生徒、講師に誰を使うかはスクール側が決めることで、レッスンの質が変わらなければ問題ないし、生徒には関係ないということだ。
 しかし俺の考え方や気持ちは全く違う。『この人から学びたい』『この人に付いて行きたい』本当にそう思える人に出会うことがどんなに難しいかを知っている。学校やクラブ、会社に入れば先輩や上司は自分で選べない。でも俺は演技、芝居、俳優の道を行くことにおいて、自分の納得できる人の下でなければ学べない。

 電話で話す俺の声は怒りで小刻みに震えてくる。自分で抑えようとしても止まらない。T氏の声も明らかに「物分りの悪いしつこい生徒」に対して明らかにイライラしていた。

 俺はT氏に「ダンさんのいないスクールに通う気はない」こと、「残っている入学金の分割分は払いたくない」ことを伝えた。普通に考えれば俺の方が間違っているのかも知れない。当然T氏もそんなことは認めようとはせず、「弁護士を立てる」という話まで出してくる。俺にとって不慣れな『契約』『責任問題』『法的手続き』などの言葉を使いながら、不安を煽ろうとする。
 でも俺も絶対に負けたくなかった。
「あんたらはそういう言い方で人を不安にさせるんですか!そうやって脅しをかけるんですか!」

 T氏との電話での話は、物別れに終わった。俺の中に残ったのはずるい大人とそのやり方に対する怒り、それに対して無力な自分への悔しさ。自分の部屋
がまるで電話と自分しかないような気持ち悪い感覚になる。
 タバコを吸っても、コーヒーを飲んでも、音楽を聴いても気持ちが全然静まらなかった。
 
数日後には、FTSのクラス分けのオーディションがある。そっちに気持ちを集中しようとした。
 『スクールのことはもういい。前に進もう。』そう思った。スクールともめたとしても、それはそれで、その時だ。“絶対負けねぇ”と改めて自分に約束した。



S#13 頭にきたあ!

 2005-11-25
 「ショーケース」が無事に終わり、新たに「FTS」というスタジオでダンさんは俺達にレッスンをしてくれると言う。俺は迷わずそこへ行くことを決めていた。当然入って1ヵ月程しか経っていない、前のスクールは辞める事になる。俺の場合、入学金を分割にしてもらっていたので、未払いがかなりある。しかしそんなことは関係ない。俺はダン・コージのレッスンが受けたくて入学した。俺にとって必要な指導者がいないスクールには、行ったところで何の意味もない。
 むしろ、スクールには腹が立っていた。
 入学したと思ったら、あっという間に一番大事な先生が辞めるという。そんなことって“あり”か?

 FTSが始まるに当たって、参加する生徒のクラスの振り分けのため、オーディションをやるということなので、俺の頭はそのことで一杯だった。

 数日して、スクールから郵便物が来た。何かと思って開けて見ると、「新しい講師」、「新しいレッスンプログラム」、「スクールの新しい方針、ビジョン」のインフォメーションだった。
 それを見ていると胸とミゾオチ、胃のあたりが熱くなってきた。読んでいるうちに頭に血も上ってきて、体が震えてくる。
 新しい講師のプロフィールには「アメリカでトレーニングをして〜」、「メソード演技を〜」、「出演作品は〜」ともっともらしいことが書いてある。
 こういう類の人のプロフィールを俺はいくつ見てきたことか。そしてその度に信じきれないところがあるため、その学校やワークショップの門を叩かなかった。
 例えばアメリカへ行って俳優のトレーニングをすることは、誰でもやろうと思えば出来ないことは無い。俺も考えたことはある。それをしなかったのは、英語と資金の問題があって、それをクリアする労力を考えたときに、その労力を使って日本で俳優として成功することを優先に考えたから。
 しかし“結果”を出せる人はそうはいない。ダンさんは世界でもっともハイレベルで巨大なマーケットを持つハリウッドで“結果”を出してきた人だ。そして俺にとって、初めて『やっと出会えた』と感じさせてくれた人だった。この出会いの為に何年かかったか・・・。
 今更わけのわからない講師のプロフィールやレッスンのプログラムを見せられたところで何の興味も湧かない。逆に頭にきた。

 俺は電話を取って、スクールの番号を押した。何を言おうかなんて全然考えてなかったが、とにかくこの怒りをぶつけないと気がすまない。
 受け付けらしい女の人が出たが、怒りの文句を言うために偉い人に代わってもらった。
 「お電話代わりました、Tです。」
 T氏は女性だったが、落ち着いた事務的な口調で、それがまた俺の怒りを増幅させた。



心配ないよ!

 2005-11-23
 簡単で、でもけっこう楽しめるエクササイズを一つ紹介しましょう。
 名前はまだないので、とりあえず『Trust your partner』としておきましょう。

 3人1組で、2人は向かい合って立ち、その間に1人が入ります。真中の人はリラックスして、お腹で呼吸することだけを意識します。この人はそのとき立っているその場所から、自分の足を動かしてはいけません。あとの2人は真中に立っている人を使って、“キャッチボール”をします。〜片方の人が真中の人を押します。押された真中の人は足を動かしてはいけないので当然倒れていきます。そこでもう片方の人が、それを受け止めて反対側へと押し返してあげます。この繰り返しです。最初は軽く、次第にエスカレートして勢いも増していきます。〜

 本当に単純ですが、やってみると必ず「うわぁー!」「ぎゃー!」と言って叫んだり、笑い出したりしますよ。

 大切なことは、

・真中のの人は完全に相手に身を任せる。
・キャッチボールする人は、しっかり責任を持って真中の人を受け止め、押し返す。


 何事も共同作業する上では、相手との信頼関係が大切ですよね。俳優も芝居は一人ではできません。このエクササイズはそれを単純に体でやる初歩のものです。
 真中の人がパートナーを信じられずに、ビビって体に余計な力が入ったままだと、パートナーはやりづらいし、キャッチボールする2人が調子に乗って無理をすると怪我の元にもなりかねません。
 
 でも3人が信頼しあって、この単純な動きをスムーズに行えたら、特に真中の人はすごく気持ちが良いんですよ。
 最初はギャ−ギャ−騒いでいても、次第に呼吸も落ち着いて、リラックスできます。
 お互いがお互いを、自分から信頼し、相手を安心させることが出来たらOKです。

 日常の生活からちょっと角度を変えてモノを見たり、考えたり、実際にやってみることで、刺激をつくれたりすることって実はけっこうあるんですよね。
このエクササイズの発展したバージョンもありますが、それはまたの機会に紹介しますね。

どうすればいいのか?自分には何がある?

 2005-11-20
 How to(やり方、方法)の習得、What to(自分の中身)の成長、二つを同時進行させること。

 “俳優”という職業の場合、特にこの『How to』『What to』は切り離しては考えられない。
 仕事上、使う素材は自分自身であり、あらゆる視点から見てセルフコントロールが必要になる。
 「どうすればその感情を出せるか?」「役作りが出来るか?」を知っていても、自分自身の中にその為に必要な要素が無ければ空回りするだけだし、もっと言うなら、その人の人間的要素が成長しなければ、物事を正しく理解することや感じること、表現することは難しい。
 
 『どんなに素晴らしいテクニック(How to)を教えても、それを支える中身(What to)がなければ何にもならない。』
とダンさんはよく言う。
 例えば、どんなに外見のカッコ良い車でも、エンジンが無ければ走らない。ブランド物の良い服を着ても、人によっては服の存在感に負けてしまっている人もいる。
 
 内側と外側。表と裏。光と影、セリフと感情、「How to」と「What to」・・・。

 芝居、演技において求められるのは、俳優のレアな感情。そこには俳優自身の生き方が映し出される。
 テクニックや外面だけを追いかけても、勘違いの世界で自己満足に終わる。人間的に素晴らしい人であっても技術や知識がなければ俳優の仕事はできない。
 これらのことは別に俳優に限ったことではなく、何かを「表現する」人達にとって、また専門的な技術を要する“職人”と呼ばれる人達にとって共通のことであるように思う。

 そしてさらにその『技術』を『自分のもの』にするには時間も労力もかかる。頭で理解したことを体に叩き込む為には何回も何回も反復練習する。そう、“練習あるのみ!”

 残念ながら近道は無い。が、自分次第で早く進む事は出来る。
 必要な「How to」を自分の持っている「What to」といかにつなげるかが大事だ。


S#12 舞台裏

 2005-11-17
 会場には満員のお客さん。入場無料とはいえ、最寄の駅からも近いとは言えない場所での一日だけの公演。それでも200人近い人たちが集まってくれている。
 みんなこれから始まる“何か”を期待している。
 開演前の俳優達は、様々だ。緊張をほぐそうとしてリラックスに努める人、セリフを小声で何回も繰り返す人、高まる気持ちのやり場がなくてやたらに誰かに話し掛ける人、落ち着いた様子で余裕のある人・・・。
 何回も舞台を踏んできた人いれば、これが初めての舞台という人もいるだろう。
 
 舞台は2人1組のショートシーンでのオムニバス構成。既存の舞台や映画の1シーンを抜き出したもの。1組あたり約10分ほどの持ち時間がある。
 
 「ショーケース」が幕を開けた。何の飾りも無く、本当に素朴な手作りの舞台。出演する先輩達は、持ち時間の中でそれぞれのやってきたことの成果を披露していく。
 「舞台に立ちたい」「芝居がしたい」その想いをストレートに舞台に乗せて、観てくれている人達に“自分の持っている何か”を必死に届けようとしている。
 俺は舞台の袖にいて本番を客席から観ることは出来ないが、それでも出演者の情熱や思いが伝わってくる。
 袖で次のスタンバイをしながら、俺はうらやましく思っていた。「舞台に立ちたい。」「お客さんの前で演じたい。」その気持ちばかりが膨れ上がる。
 自分の出番を終えて袖に帰ってきた人も、これから出番を迎える人もみんないい顔をしている。

 「ショーケース」は無事に終わった。お客さんも出演した先輩たちもいいテンションで終演後の会話を交わす。
 「来てくれてありがとう!」
 「すごいね、楽しかったよ!」
 そんな会話を耳の端っこで捕らえながら、俺は撤収作業にかかっている。舞台が無事に終わったことは素晴らしい。お客さんも満足している様子だし。ただ一つ、自分が出演していなかったことだけが悔しい。
 ここに書くことが出来なかったことも含め、多くの障害を乗り越えての「ショーケース」。みんなで一つのものを作りあげるという大切なことを、俺は今までと違った視点から見て、参加し、感じることができた。27歳にもなって一番下っ端のスタッフで、一瞬も明かりのついた舞台に上がることは無く、ギャラも発生しない。しかしその状況の中で、『何故自分はここで学ぶのか、俳優としての修行をするのか』を改めて考えることができた。
 そして「ダンさんの下でなら『一番大切なもの』を学べる。」そう感じた。それを言葉には出来なかったが、体は感じていた。

 すぐに新しいスタジオの動きが始まる。俺の本当の出発はそこからだ。誰にも負けたくないし、あきらめるつもりも無い。
 次の舞台でメインキャラクターで出演し、最高の芝居をしている自分の姿を想像しながら、夜の帰り道を歩いた。
 ふと見上げた先にある月が、微笑んでくれているようだった。
 


S#11 ショーケース

 2005-11-14
 ショーケースの会場は世田谷区の某中学校内のホール。最寄の駅から歩いて15分くらいかかる。キャパシティは約200人。舞台はそれ程広くはないが、客席はしっかりとした椅子であり、公民館のようなイメージ。ただ舞台裏側はほとんどスペースは無い。講演会や弁論大会、朗読、合唱なんかには向いているつくりだ。
 リハーサルは慌ただしかった。みんな俳優として舞台には上がりたいが、スタッフの経験がある人や動きを知っている人はほとんどいなく、「手探り」の状態。舞台上はセットなどは無く、シーンによってテーブルやイスのセッティングを変えるだけ。
 予期しない問題やハプニングも起こる。スタッフと役者を兼任する人もいて、会場はちょっとピリピリしている感じがする。
 
 俺は大道具係でテーブルやイスのセッティング担当。難しいことは何も無い。が、俺は途中で何だかおかしくなった。
 一歩引いて周りを見渡したときに、みんな俺の先輩ではある。たとえ年は若くてもである。でも「先輩」と呼ぶには“え〜っ”と思ってしまう人もけっこういた。妙に役者気取りな人、物事を知らない人、あたふたしてるだけの人など。ダンさんの下で学ぶということしかほとんど考えず、他の生徒がどういう人なのかについては、今までそれほど気にしていなかったが、こういう状況になると“人間”がよく見える。
 小さな仕事一つとっても、「それは違うだろう!」と思うことがある。でも「今ここでそれを言ってもこの人は聞かないだろう」と思うと言わなくなる。俺も実際にスタッフの経験があるわけではないが、舞台の上で芝居をしてきた数だけなら(どういう舞台かはとりあえずさておき)、たぶんこの中の誰よりも多い。
 しかしここでは俺は「新人くん」だ。余計なことは言わないし、しない。いらないことででしゃばらないほうがいい。
 
 自分の中に二つの顔がある。高いテンションで「この舞台の成功に協力しようとしている自分」と、一歩引いて「この現場、ここにいる人たち、これから始まることを冷静に観察しようとしている自分」。
 
 何とかリハーサルが終わり、あとは本番。

 本番前の緊張感が会場全体を包む。俺はキャストではないにしても、この少し張り詰めたような引き締まった空気がたまらない。




俳優〜その定義

 2005-11-12
 Self Employee〜俳優は自分が自分の経営者であれ!

 ダンさんにこのことを聞いたときはビックリした。と同時に納得し、その必要性も強く感じた。そしてそれが出来なければ未来は創れないと思った。

 商品である自分を、常に自分でトレーニングして商品価値を向上させ、営業し、仕事を獲る。または仕事にする。
 出演する現場ではプレーヤーとしての最大限の仕事をし、次の仕事につなげる。

 アメリカでは、仕事の交渉や調整(スケジュールやギャラのことなど)をスムーズに行えるように、俳優がその為の事務所を雇うそうだ。もちろん仕事ができるレベルの人たちの話だが。
 日本とはまるで逆だ。
 アメリカと日本では業界のシステム、俳優の職業的な地位や保障制度などあらゆる違いはあるにせよ、裏を返せば、演技者としてだけではなくビジネスマンとしても高い能力をもっていなければ成立しないということだ。

 ではまずそうなるためにはどうすればいいか?

・Self Manegement:整理整頓、自己管理。
・Self Produce:自分を商品に、ブランドにする。
・Self Employee:自分という商品でビジネスをする。

 俳優の商品価値は、その人の人間的な「魅力」。実体のないものだけにやっかいだ。
 手にとって使うものや食べられるものなら、売り手も買い手もわかりやすい。
 映画や舞台の場合は、お客さんは感動を求めてくる。ストーリーの中に入って、キャラクターと一緒にその世界を疑似体験することで、日常生活では味わえない感情や感覚を求めてくる。その為に時間とお金を割いてくれている。

 他の業界、業種、仕事と何も変わりは無い。
 最近は特に、専門分野でプロとして活躍して個人であっても大企業と対等に仕事をする人たちや、独自のアイディアや商材で勝負する人も増えている。
 国や業界、分野の垣根を越えて自由な発想で新しいサービスを展開していく人たちも多い。
 俳優も常にトレーニングして商品価値と質の向上に務める。出演した作品は仕事の結果であり、次の仕事のための強力な営業素材。
 Art&Businessの両立は難しいが、不可能ではない。やってる人がいるんだから。

 好きなことを仕事にするのは簡単ではない。でもこんなに素敵なこともない。

変な顔してみよう!

 2005-11-10
 体をほぐしたら、次は顔をほぐしていきます。“顔をほぐす”というとおかしな感じに聞こえるかも知れませんが。
 初めて会う人の前や、人前でスピーチしなければならないときなど、緊張してしまう時には体もそうでが、顔もこわばったりして普段の表情が出ないときってありませんか?
 
 顔には100を超える種類の筋肉があり、その筋肉が表情を作ってくれています。この筋肉たちを自分で動かして、普段と違った刺激を与えてあげることで、動き自体も楽になるし、表情も豊になります。
 毎日続けてやると“顔のダイエット”にも効くんですよ。

 SLAワークショップでは何をやるかというと大きく分けて、

・一人でも出来る顔のエクササイズ
・にらめっこ!
               です。

 まず一人でやるエクササイズのほうは、とりあえず普段しない変な顔をしてもらいます。
 特に緊張しやすい(力が入りやすい)のは、目のまわりと口のまわりです。わざと力を入れたり抜いたりしがら、自由に動かせるようにしていきます。発展すると鼻を広げたり、耳を動かしたりもしますよ。

 次にはにらめっこ!です。当然ながら二人一組で変な顔をし合って、笑ったほうが負けというやつです。
 単純ですが、これが面白いんです。
 例えば、「最後に“にらめっこ”したのいつ?」と聞かれたらどうでしょう?けっこう前のことになるんではないでしょうか?その懐かしさも手伝って、みなさん楽しんでやってくれていますよ。

 顔がある程度やわらかくなってきたら、今度は“全身にらめっこ!”に入ります。
 文字通り、全身を自由に使って相手を笑わせてもらいます。おかしな顔、おかしな動き、をしてもらいますが、やってる当人達は集中すると、自分でも予想してない動きや表情がでてきます。
 そして終わった後にはみんな大笑いなんです。

 大事なことは「楽しむこと」「思いっきり笑うこと」なんですよ。
 本当の感情が動くときには、素顔の自分が顔をだすんです。

 “何かを一緒にやること” “一緒に楽しみ、笑いあうこと” “終わったら握手!”
 SLAワークショップではこれを大事にしています。

S#10 新しいスタジオ

 2005-11-09
 ダンさんの言葉には嘘はなかった。
 スクールから抜けた後は、新たにトレーニングスタジオをつくるということだった。俳優を育て、作品を製作し、認められた人はマネージメントも受けられるという。
 俺がスクールに入るためのオーディションの際にも、事務手続きをする際にも、関係者の人たちが説明してくれたヴィジョンだったが、それはもともとダンさんの発想でありヴィジョンであった。しかしスクール側はその方向には進まず、結局両者は袂を分かつことになった。
 
 そんな場所が出来たら、どんなに素晴らしいだろうか・・・。
 俺はそこに絶対に参加したかった。
 
 努力が必ずしも正当に報われるとは限らない芸能界という世界。俺の知っている芸能界はほんの一端だったけど、それでも俺なりに見てきたものや感じてきたものはある。どんなに厳しい世界かということも知っているつもりだ。

 迷いなんかはない。行くしかない。

 「F・T・S」。それが新しく出来るスタジオの名前。

 金もコネも無く、実力もない俺達。ネームバリューなんかあるはずも無い。
 でも「夢」は持っている。「情熱」もある。ダンさんが拾ってくれたのはそこなんだなと思った。
 俺は自分で自覚している以上に、不安だったようだ。
 「せっかく出会えた先生、学ぶための環境を失ってしまうのか」と。
 安心と喜びを見つけられて、初めてそれまで持っていた不安の大きさを知った。

 スタジオがどんな形になるのかはわからない。しかし「芝居がしたい」「俳優としての実力をつけたい」「ダンさんの下で学ばなければいけない」、その想いは変わらない。いや、むしろ強くなっている。

 「SHOW CASE」を区切りとして新しい動きが始まる。
 その「SHOW CASE」で先輩達がどんなものを見せてくれるか楽しみだった。
 新しい自分達の場所をつくる舞台。その幕は自分達の手で開ける。
 
 本番は近い。

S#9 想い

 2005-11-07
 「SHOW CASE」の準備と平行して、その後のことをどうするか、どうなるのかが、みんなの心配するところだだった。
 ダンさんから学びたくても、スクールにはダンさんは戻らない。学ぶ場所がなくなってしまう。俺なんかは、学び始めてまだ1ヵ月ほどしか経っていなく、吸収できたものなどまだない。
 ダンさんのいないスクールには魅力はない。ダンさんから学ぶための環境があったからこそ、借金してスクールに入り、高い授業料を払っていくことを納得できた。
 生活していくうえで、いろんなところに歪みができ、犠牲にしなければいけないものも多かった。
 どんな辛さも苦しさも、自分の未来の為、“一流の、プロの俳優”になるための道を歩けると思えば、その喜びが全てを吹き飛ばしてくれるはずだった。
 
 何かに出会い、喜び、期待し、真剣にぶつかり、そして裏切られる・・・。
 そんなことが何度あったろうか・・・。

 ドラマの仕事が入って撮影が無事に終了しても、O・Aではカットされていたり。「決定」と聞かされていたはずの仕事が、土壇場でチャラになったり。
 女優さんの付き人も3年半やってきた。「付き人としての現場修行が終わったら、事務所はあなたをイチオシで売ってくれるから。」そう聞かされて少なからず期待していた。話半分としても、俳優としての仕事やオーディションが少しは増えると思っていた。しかしそれも裏切られた。
 こんな話は、数えれば切りが無い。

 子供の頃、親父に言われたことがある。「ケンカに勝つためにはどうしたらいいか?」、答えは簡単だった。「勝つまでやる」それだけだった。

 俺はまだ「ケンカ」するためのステージにも上がっていない。「挑戦」すら満足に出来ていない。これからやっと「挑戦」するための力をつける修行が出来ると思った矢先にまたこうだ。

 俺は神経質になりそうだった。多少のことには動じない自信はあったが、さすがにそうもいかない。

 このとき俺が信じて期待することができたのはただ一つ。

 「俺はおまえ達を見捨てるようなことはしない。」

 あの時ダンさんの言ってくれたこの言葉だけだった。

体をほぐします!

 2005-11-05
 ワークショップ関連記事の一発目は、やっぱり「体をほぐす」ところからいきますね。
 何の準備もなしに、体を動かしたり、声を出したりということをいきなりトップギアでやろうとすると、怪我の基ですよね。
 
 やること自体は普通の柔軟体操とあまり変わりませんが、何が他と違うかというと、意識と集中です。

 体全体を伸ばして深呼吸で空気を入れ替えたら、指先から手、腕、肩・・・と順番に動かしていきますが、その課程で注意してもらうのは、
 
 ・絶えず深い呼吸をすること!
 ・意志を持って体を動かす!
 ・筋肉の動きや伸びている筋、感覚を意識して感じる!


 俳優のトレーニングとしては、自分の体と感情を自由につかう為の第1歩。普通の方々にとっては、ありふれた日常生活からの脱皮の入り口。

 簡単に思えるかも知れないけど、やってみると意外と難しいんですよ。呼吸に集中すると動きがバラバラになったり、感覚を気にしてばかりだと呼吸を忘れたりなんかして。
 ちなみに呼吸を忘れるというのは、息が止まるというのではないです。それでは死んでしまうので。「気を抜くと呼吸がごく浅くなる」という意味です。

 面白いのは、ワークショップ冒頭の体をほぐすエクササイズから、みんなの集中している顔、呼吸を忘れているのを指摘されたりしたときの「ああ、しまった!」という顔など、
        
         みんなのレアな表情

が、見え始めてくるところですね。途中で話し掛けると、話に夢中になって体を動かすのを忘れる人もいたりして。
 自己紹介のときは硬さがあっても、エクササイズが進むにつれてドンドンほぐれていきます。そして会社やバイト先、学校など、普段は出さない顔が徐々に出てくるんです。

 次はもう少し内容的なことも書きたいと思いますので、お楽しみに〜。

体と心の体操を!

 2005-11-04
 このブログでは、今までの経験や学んだことなど、過去の記録を綴って来ましたが、そろそろ“現在”やっていることも書き始めたいと思います。

 俺はSLAワークショップで講師を務めさせてもらってます。そこでの内容、感じたこと、エクササイズによって参加者の方達がどう変わっていくかなどを書いていこうと思います。
 
 ワークショップ参加者の方は、「俳優志望」「声優志望」「ナレーター志望」の方や、全くそういったことに関係なく、「楽しいから参加する」「気分転換になる」「ストレスが発散できる」といって参加するごく普通の方までいらっしゃいます。

 ちょっとだけ内容の説明をすると、「思いっきり体を動かし、大きな声を出して普段閉じ込めてしまっている感情をバンバン動かす」ものなんです。
 エクササイズをやっていく中で、感情があふれて泣き出す人、最初は心を閉じ込めがちでもどんどん自分の意見を言うようになっていく人、人前に立つ恥ずかしさとプレッシャーを楽しむようになる人など、様々です。
 
 さあ、何から書こうか・・・、お楽しみに。
 

S#8 障害

 2005-11-03
 「SHOW CASE」の開催とダンさんがスクールを辞めるにあたって、先輩達のクラスのレッスンの見学が許可された。
 ADVANCE CLASS〜上級者、プロの俳優として仕事ができる人達のためのクラス。
 スクールに入ったばかりの俺達には、今まで見学は許されてなかった。そこではどんなレッスンが行われ、先輩達はどんな芝居、演技をするのかどれくらいの実力を持っているのか・・・。きっと“自由な演技”“説得力と存在感にあふれた芝居”“個性豊な俳優達”という言葉がピッタリはまるんだろうと想像が膨らむばかりだった。
 
 「SHOW CASE」の本番まで、あと10日ほど。普通、舞台を創るに当たっては、このくらいの時期には全体は出来上がっている。もちろんそれぞれの団体やカンパニーで、やりかたは違うので一概にそうとは言えないが、どちらにしても稽古は大詰めに入り、キャスト、スタッフ、関係者のテンションは本番に向けて一気に上がる。全員が一つになり、一つのものを作り上げることに向かって。
  
 見学が許可された「ADVANCE CLASS」では、「SHOW CASE」のリハーサルが行われた。
 入りきれない程の生徒がいる。知っている顔もあれば、全く初めての顔もある。
 「SHOW CASE」の構成に沿って、二人一組のショートシーンを演じる先輩達。彼らは約1年、ダンさんの教えを受けてきたこのスクールでトップクラスの人たち。俺は明らかな差を見せつけられた。
 感情が自由であり、自分の演技を押し付けていない。ちゃんと言葉と感情のやり取りをしている。台本という決められたルールの中で。

 みんなのテンションがスタジオ内の温度を2〜3度は上げているように感じる。しかも今までに俺が感じたことの無い空気がある。
 何と言えばいいのか・・・。そう、“信じるもののために何があろうと突き進む”、その想いであふれていた。
 
 スクール側は、方向性の違いからダンさんと揉めている様だった。すでに新しい先生を探しているらしいことや、「SHOW CASE」自体を止めさせようとしているのが、新人の俺の耳にも噂で伝わってくる。
 生徒も「ダンさん派」と「スクール派」に分かれているらしい。レッスン中にダンさんに食って掛かる生徒もいた。
 キャストもスタッフも、ギャラが出るわけではない。お客さんからもお金は取らないという。
 たった1日、公共の施設を借りての1回だけの公演。
 本当に“手作り”の舞台だ。
 本番までもう時間も無い。

どこへ行きたいの? 今どこにいるの?

 2005-11-01
 行きたいところへ行くために、欲しいものを手に入れるために、やりたいことをやるためには、「今の自分がいる場所、自分のレベルを知ること」。

 例えばどこかへ行くにしても、「目的地」と「現在地点」を把握してなかったら、どうしようもないよな。それがあるから、「歩いていこうかな」「走れるかな」「車に乗れるか」「バスにしようか」「電車がいいかな」「いっそ飛行機で・・・」といろんな行き方が出てくる。

 芝居にしても一緒のことで、「どんな俳優になりたいか」「どんな芝居がしたいか」を明確にして、そして「今の自分のレベル」「今自分は何が出来るか」を把握しないと前に進めない。進もうとしても、効率が悪い。

 「目的地」と「現在地点」=「なりたい自分」と「今の自分」がわかれば、その間にある距離がわかる。
 次にはその距離を埋めるために必要なものを見つけて、いくつもの「Small Goal」〜小さな目標を自分で設定できる。
 そうしたらその「Small Goal」をクリアするために、今自分は何をしなければならないか、必要なものは何かがわかるよな。
 どうしたらそれが出来るか、どうやってやるかも考えるし、いろんな選択肢が出てくる。

 後はやるだけ。
 『目的を達成するために、綿密に戦略を練り、作戦を立て、神経質なほど検証しチェックしたら、行動は大胆に。恐れずに迷わずに』
 
 夢は見るものではなく掴むもの。  By ダン・コージ

 なりたい自分になるために、しっかりと自分の足で前に進んでいこう。自分の人生を創るのは自分しかいないんだから。
 
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫